ご飯の横に汁物があるのが日本人ならではの食卓ですね。単に汁物と言っても、様々な種類が思い浮かびますが、独身男の私にとって特に嬉しいのがけんちん汁と豚汁です。
と言うのも、一人暮らしの友である吉野家で、味噌汁をグレードアップした(価格面)サイドメニューがこの2つだから。
貧乏性かもしれませんが、始めて一人暮らしを始めた頃から10数年、そんなちょっとした贅沢に幸せを感じる日々を過ごしています。そんなもんだから、家でも贅沢をしたい時に作ったりしていますね。
元々は料理の仕事をしていた時の経験を活かしつつ、いつも何気なく材料を集めては、それとなく調理しているのですが、ある日友人から「ところで、けんちん汁と豚汁の違いって何なの?」と聞かれました。
確かに、両方似ているからややこしいですもんね。友人が疑問に思うのも良く分かります。恐らく、検索からこの記事にいらっしゃたあなたも、同じ様に疑問を持たれていることと思います。
私が友人に解説した事を、更に詳しい説明と合わせてお伝えしていきますので、一緒にサクッと解決していきましょう♪
けんちん汁と豚汁の決定的な違いは
友人との会話をそのまま書きますと、この通り。
けんちん汁って豚肉どころか、動物由来の食品を全く使わないんだよね。それこそ、出汁用の鰹節すら。そもそもが精進料理なんだよね。
そう、ポイントはズバリ!
けんちん汁は精進料理←コレです
具材とか調理法を違いに挙げる方が多いのですが、これは地域や家庭によっての違いもあり、けんちん汁と豚汁の違いを解説するには少々不適切。
一番分かり易く、かつ的確な答えは、けんちん汁が精進料理なので、肉の類を一切使わず、野菜で旨みを出しているという点なんです。
ちょっと詳しく見てみましょう。
けんちん汁の由来
けんちん汁が誕生した由来は正確には分かってはいませんが、有力とされるものが2つあります。
- 普茶料理(ふちゃりょうり)の巻繊(ケンチャン)が元となったという説
- 鎌倉の建長寺にて修行僧が作ったという説
どちらが正しいとは言えません。しかし、共通するのは両方とも精進料理だという事です。
巻繊の汁という説
普茶料理とは、中国由来の精進料理の事で、植物油や葛が使われているものが多いことが特徴です。
この普茶料理の1つに巻繊があり、それを汁物へと変えたのがけんちん汁だと言われています。「ケンチャンの汁⇒ケンチャン汁⇒けんちん汁」と訛っていったという訳ですね。
巻繊は、元々は根菜を含む野菜やキノコを千切りにして、油揚げや湯葉に巻いて揚げた料理です。それが、野菜と豆腐を油で炒めて、あんかけにしたものに変わっていきました。この形態は、今でも長崎県の壱岐に残っています。
具材も現在のけんちん汁に近いですし、納得のいく説だと言えるでしょう。
建長寺の汁という説
鎌倉の建長寺のお坊さんが、以前NHKの「SAVE THE FUTURE」という番組にて、けんちん汁は建長寺由来の汁物だという話をしています。
昔々、このお寺の修行僧が調理中に豆腐を崩してしまい、野菜と共に炒めて、それを醤油を使った汁にしたのが元だそう。同じく言葉の訛りで、「けんちょうじの汁⇒けんちょう汁⇒けんちん汁」と変わっていったという説です。
北鎌倉駅から徒歩圏内ですので、けんちん汁ファンの方は、聖地巡礼の様な形で訪れてみるのも面白いかなと思います。
ちなみに、このお寺の近くには、「鎌倉五山」という、建長汁と名前の付いた、昔ながらのけんちん汁を食べさせてくれるお店がありますので、合わせて訪れるのも良いでしょう。
個人的にはどっちかが正しいというよりも、どちらの説も正しいのではないかと思っています。
精進料理という枠組みの中で、動物性の食品を使わないで具沢山の汁物を作るとなると、けんちん汁がピッタリ来ますからね。恐らく地域が違うというだけじゃないかなと^^
兎にも角にも、豚汁には豚肉が入り、けんちん汁には動物由来の食品が入らない。これがこの2つの汁物の決定的な違いなんですよ。
そうそう。折角なのけんちん汁、豚汁への私の作り方へのこだわりを簡単にご紹介しておきますね。
けんちん汁と豚汁に欠かせないモノ
どちらも料理の仕事をしていた頃には、まかないの定番でした。ただ、このまかないというのは、不味いものを作ると先輩から非難轟々となる恐ろしいもの。
その恐怖と戦いながら試行錯誤を繰り返した結果、自分としては以下のこだわりを入れる形に落ち着きました。
まず、けんちん汁については…
- 根菜は必ず入れる
- 具材を炒める時の油は絶対にごま油
- 出汁は昆布と干ししいたけで取り、だしの素や顆粒だしは使わない
- 味噌では無く、醤油味にする
根菜は土旨さが出るから。後はオリジナルへの敬意を込めて醤油味にして、あとは精進料理として仕上げるイメージです。肉類が入らない事で、ごま油の香りがかなり生きてきますし、シンプルに旨い仕上がりを目指していますね。
対して、豚汁については2つだけ。
- 同じく具材は炒める(ただしサラダ油で十分)
- 味噌汁とは違い、酒を入れる
古い時代のレシピを見ると、具を湯通しするのが正しい様です。でも、具を炒めるのは、やはり油大好きな現代人としては欠かせません。ですが、豚肉からどんどん油が出てきて、ほっとくとギトギトになっちゃいます。なので、煮る時には徹底的に表面に浮いてきた油とアクを取り除きます。
また、酒を入れることで、単なる豚肉入りの味噌汁ではなく、風味豊かなご馳走に仕上がりますね。甘いのが嫌いじゃない人は、ちょこっとだけみりんを入れるのもアリですよ。
けんちん汁と豚汁の本質的な違いは精進料理かどうかという事です。
具材や調理法は地域や家庭によって違いますが、豚肉が入る入らない、出汁に動物性のものが入る入らない、その辺りでこの2つの汁は分かれていると言って良いでしょう。
ちなみに、最近他所の家で豚汁をいただくと、醤油味だったり、根菜が入ってなかったりと、それぞれに違いがあって本当に面白いと感じています。
家庭の味。なんだか最近聞かなくなったこの言葉ですが、何だかんだ現代でも強く各家庭に根付いているもんで、何だか嬉しくなっちゃうんですよ^^
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